はり灸は癒し上手 福井の鍼灸師ノートから F
2001年 (平成13年) 5月18日 (金曜日)
いい仕事するために 芸術生み出す手助け
県内で開業する鍼灸師には、いろいろな人がいる。親や代々から受け継いだ治療院もあれば、県外で開業し、福井に帰ってきた人など、さまざまである。長年、東京で開業していたある鍼灸師は、さまざまな職業の患者をみてきた。
その中で、意外に多いのが、音楽家や写真家など芸術関係者である。彼らは「常にいい仕事をするために、はり灸している」と言っていいかもしれない。
「新世紀を拓く十人の山の写真家」にも選ばれた山岳写真家の岩橋崇至さんは、日本アルプスをはじめ国内外の美しい山々を撮りつづけているが、山に登る前と後には必ず、はり治療を受けていた。山岳写真家は常に五十`ほどの重い機材を持ちながらの登山となるため身体を痛めやすい。岩橋さんも腰痛が持病だった。
数カ月がかりの登山に備え、夏の前に必ずやってきてははりで体調を整え、やがて真っ黒な顔をしてまた来院する。登る前は「これから大仕事だ」との緊張感もあるのだろう、その緊張をほぐす意味で、リラックスを求めていたかもしれない。
音楽家の治療院通いも多い。毎日の楽器演奏で、肩こりを起こしたり、腕や指先を痛めるためだ。クラシック演奏者のほか、ジャス奏者など同じ音楽家でもいろいろ。若い演奏家たちの中には、演奏会本番を控えてのストレスから肩こりや頭痛を訴える人も多い。はり灸治療によってリラックスを得た彼ら彼女たちは、安心感を持ちながらコンサートの本番に挑む。NHK交響楽団をはじめ日本を代表するオーケストラの演奏家は、それこそロコミで自分に合った鍼灸院を探すほどだ。
音楽家たちはいい演奏を聴衆に聞かすのが仕事、体調が悪いと即演奏にも響く。だからはり灸は「健康管理」の一つなのだ。「悪くなったから打つ」のではなく、「悪くならないために打つ」のだ。
でも、こうした考え方は、芸術家たちに限らず、実はごく一般の人たちにも当てはまるのではないか。長い人生のうち、三十代までは多少の無理は効く。でも四、五十代になると、それまで積み重なった疲労に対し自分の力で治せないものも出てくる。そんな時、ちょっと人の手を借りてみる。その「人の手」の一つにはり灸を選んでもらえたら・・・。
福井ではどこか悪くなったら、治療院に来るきっかけというのが多い。いい仕事をするためにも、はり灸はそのお手伝いができると思う。
(県鍼灸師会青年部 イラストは鍼灸師の中村寛氏)
「あなたも考えすぎないで」
