はり灸は癒し上手 福井の鍼灸師ノートから D
2001年(平成13年) 5月4日 (金曜日)
和痛分娩体験記 あの陣痛が和らいだ
はり灸治療院によって違いはあるが、はり灸院に通うのは男女の比率差でいうと、三対七ぐらい。女性の患者の方が圧倒的に多い。男性に比べ、結婚後の出産、子育て、場合によっては仕事との両立など、女性の方が生活環境の変化が多く、それがホルモンの変化やさまざまなストレスにつながるかもしれない。
中でもはり灸とお産は、読者にとってもなかなか興味深い点が多いかもしれない。出産した経験のある女性なら、だれでも覚えているあの陣痛の痛み。あの痛みを自らのはりでは和らげたある女性鍼灸師の話、「和痛分娩」体験を紹介しよう。
この鍼灸師の場合、かかった産婦人科医が東洋医学に大変理解があり、大変協力的だった。というのも一人目の出産時にも、なかなか陣痛が起こらないのでお灸をすえて陣痛を促進させた体験があり、三人目の時には先生の了解の上、自らはりを試してみたのだ。
さて三人目の出産時、破水までは至らなかったが、病院に到着した時には、すでに産道がかなり開き、かなり陣痛は来ていたはずだ。「はず」というのは、実は自宅で既に軽い低周波のはりを試していたため、自分でも陣痛が起きているのは分かるのだが、過去のケースと比べ、どの程度の進み具合かわからなかったのだ。
ツボは「合谷」と呼ばれる手のツポで、親指と人さし指の付け根の部分にある。中国では、はり麻酔のツボとして有名なツボの一つで、帝王切開の時にも応用。手術の前にツボを選び四十分から一時間ほどはりに低周波通電させてから、手術部位をマヒさせる。
両手の合谷に先生の協力ではりを打ち、低周波通電して、分娩台に移った。三、四十分ほどたったろうか。ところが、はり麻酔がよく効きすぎたのか、産道は着実に開いてきているのに陣痛がないので思わず先生に「先生、息むタイミングがよくわかりません」「そうか、それは困ったな」と産科医。そこで「適当なところで、はりを抜こうか」と産科医と相談していたその時、抜くつもりもなかったのに手を動かした時に、はりが一本ポンととれてしまった。とその途端どうだろう。「どどーん」と頭から思わぬ痛みに襲われた。それが雪崩のごとくやってきたのである。「ああ、陣痛だ。先生、これで息むことがでます」と、がんばっていると十分ほどで無事、出産が終わった。
「お産の時にはりなんて大丈夫?」と思う人がいるかもしれないが、感覚がマヒしているだけなので、薬のような副作用の不安はなく、術後の回復はかなり早い。ただ効き方に個人差もあるため、まだまだ普及しているとは言い難いようだ。