はり灸は癒し上手 福井の鍼灸師ノートから B
2001年(平成13年)4月20日(金曜日)
先入観「痛みさえ・・・」 福井県は後進県かも!!
福井県内に今、五十人ほどが鍼灸を専門として開業している。この数は全国的にそう多い方ではない。そのせいもあるのかもしれないが、福井県民のはり灸に対する理解度は残念ながらまだまだ。福井市内のある治療院でこんなことがあった。
ある朝のこと。「ここが痛いやって、早くここ、ここに打ってんでの」髪を振り乱し、顔もノーメイク、まるで寝起きそのままという姿で飛び込んできた中年女性は、まったくの初診の患者さんだった。受け付けもせず、治療室まで一直線に入り込んでしまった。
「もー、とにかく痛いんだから。この腰のとこ早く、何でもいいから打ってよ」。患者はここといわんばかりに、そそくさとスカートを下ろし始めた。話を聞く暇すら与えない。それほど痛かったのだろう。取り乱すのは分かるのだが、鍼灸師は言われるままにはりを身体に打つわけにはいかない。
「横になって、おなかを触らせて」とベッドに落ち着かせた。はりを打つまでにおなかを触りながら「便秘してますね」「あなたは胃下垂ですね」と体調や身体の特徴を言い当てていくと女性は急に、ほっとしたかのような表情で、はりを打つ態勢に入ってくれた。
実は初診なのに、この女性と同じ行動をとる患者は結構いる。要するに、福井の入には「鍼灸院は、腰痛や肩こりを治すところ」のイメージが強すぎるのだ。「痛い部分にはりを打つかマッサージしてくれて、痛みさえ和らげてくれればいい」。そんな先入観が、この女性のような行動につながるのだ。
今のはり灸はそうではない。「腰痛、肩こり」はもちろんだが、最近では、がんの痛みの治療からノイローゼやうつ病などにも応用されている。WHO(世界保健機関)の委員会もいろいろな炎症や疼痛、感冒、気管支ぜんそく、顔面まひ、十二指腸潰瘍、メニエル病など四十七疾患について効果があると認めている。すぱり「はり灸イコール腰痛、肩こり」の考えは古い。
はり灸の先進地といえる大阪から県内に嫁いできた二十代の主婦がこう嘆いた。「子供に小児ばりを打ってもらおうとしたら、姑から(はりなんてとんでもない)と大反対された。関西では当たり前の小児ばりが福井ではだめなの」。鍼灸師として残念な話である。もちろん、県民への低い理解度には私たちの努力不足もある。でも「福井を少しでもはり灸先進地にしたい」。わたしたちはそう願っている。
(県鍼灸師会青年部 イラストは鍼灸師の中村寛氏)
「福井をもっと癒せたら」
